こんな事業を形にしたい、まだ誰も知らない自分の頭の中にあるアイデアを世に出したい。起業するタイミングはそれぞれですが、起業したいと思い立ったならば前に前にその計画を進めましょう。
なぜならば、起業したいと思う人は、今その思いに蓋をしたとしても、すぐにまた起業したいという思いが、以前よりも強く心の中から芽吹いてくるからです。
それならば、やれることをやって納得のいくところまで挑戦することには、きっと意味があるはずです。
今回は起業すると決意した人が個人事業としてスタートするべきか会社を設立するべきか、どちらを選ぶべきなのかについて、日々中小企業や個人事業主をサポートしてきた筆者が各項目から見たメリットをわかりやすく解説します。
個人事業で始めるのか会社を設立して法人として始めるのか
起業すると決めたら、まず最初に個人として事業を始めるのか、それとも会社を設立して法人として事業を始めるのかを決めなければいけません。
何となく始めてしまっている人も多いと思いますが、個人事業主としてスタートするにしても各種届出を行政に対して提出する必要があります。
どちらが良いとは一概には言えないのですが、それぞれ一長一短がありますので、順番に確認しましょう。
事業を始めるにあたっての初期費用
事業を始めるにあたって初期費用という面で考えるのであれば、個人事業の方が良いです。個人事業としてスタートする場合、その事業に必要な資金だけを準備すれば始められます。
逆に会社設立の場合は、設立登記費用や資本金が必要となります。もちろん個人事業の場合同様、事業に必要な資金も必要となります。
事業を始めるにあたっての手間
個人事業でスタートする場合は、開業してから1ヶ月以内に「開業届」を税務署に提出するだけです。
それに対して、会社設立をする場合は「定款」を作成しなければなりません。また、登記をする必要もありますので自分で全てを完結するには、個人事業でスタートするよりは少しハードルが高くなります。
そのため、始めるにあたっての手間という観点から考えれば、個人事業でスタートすることにメリットがあります。
事業を始めた場合の日々の会計
会社の場合、複式簿記で処理する必要があります。個人事業の場合は、白色申告か青色申告かで煩雑さが変わってきます。白色申告でスタートする場合は極めて簡便な処理となりますが、青色申告では白色申告よりも煩雑になります。
ただし、会計ソフトを利用することで会計の知識がない方でもそれなりに記帳することは可能です。
下記の会計ソフトはどちらも有名であり、これらの会計ソフトを利用すれば問題なく進められるはずです。
法人の場合は、税務申告書の作成が困難となりますので個人で全てをまかなうことは難しいかもしれません。
公的保険
個人事業の場合は国民健康保険と国民年金に加入することになります。また、会社の場合は健康保険と厚生年金に加入します。費用負担という観点から見ると個人事業の負担は会社負担よりは軽くなります。他には会社の場合、従業員を雇用すると労災保険と雇用保険への加入も必要となります。
信用や資金調達のしやすさ
個人事業に比べると会社の方が信用は得られやすくなります。会社であれば信用されるという訳ではないですが、資本金があること等により資金調達もしやすくなりますし、能力の高い人材をたくさん雇用したい場合は、個人事業と比べ人材を集めやすいというメリットがあります。就職活動をする際に、社会保険はあるのか?や退職金はあるのか?等々、みなさん確認します。この点は会社を設立する大きなメリットです。
税金はどちらが得になるのか
個人事業でも青色申告を申請することで、要件に該当すれば65万円の特別控除を受けることが可能ですが、法人の場合損金算入(経費にできる費用)可能な支出の範囲が広いことと最高税率が個人事業に適用される所得税の最高税率よりも低いことなどから、会社を設立した方がメリットがあると言えます。
個人事業として始める場合の最初の手続き
個人事業として始める場合
個人事業で始めると決めた場合、開業後1ヶ月以内に開業届を提出しなければなりません。これを提出することが個人事業としてのスタートラインになります。この開業届の提出と同時に「青色申告承認申請書」と「青色事業専従者給与に関する届出書」を該当する場合は提出しましょう。これらには提出期限が設けられており、提出期限に間に合えば開業直後からメリットを受けることが可能となります。
もし、間に合わなかったとしても開業年にメリットを受けられなくなるだけで、翌年からはメリットは適用されますのでご安心下さい。
どんなメリットがあるの
提出するためには、まずはそれらの用紙を入手しなければなりません。入手方法としては、税務署でもらってくる方法、国税庁のホームページからダウンロードする方法、オンラインで提出する方法があります。
下記に提出書類の一覧を作成しました。まずは開業届を提出することにより税務署に対して事業を始めましたということを報告することになります。次に青色申告承認申請書を提出することによって、10万円または65万円の控除を受けることが可能となります。そして、青色事業専従者給与に関する届出書を提出すると自分の家族に対して支払った給与を経費とすることができます。提出していない場合、家族に給与と称してお金を支払っても一切経費としては認められません。
この開業届はいろいろな場面で提出を求められます。例えば、補助金や助成金を申請する場合であったり、クレジットカードを作りたいとき金融機関の口座を開設したい時などさまざまな場面で求められる書類です。
税務署へ提出する書類 | 提出期限 |
---|---|
個人事業の開業・廃業等届出書 | 開業の日から1ヶ月以内 |
青色申告承認申請書 | 開業の日が1月15日以前の場合は3月15日まで。開業の日が1月16日以降の場合は開業の日から2ヶ月以内。 |
青色事業専従者給与に関する届出書 | 開業の日が1月15日以前の場合は3月15日まで。開業の日が1月16日以降の場合は開業の日から2ヶ月以内。 |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 随時 |
所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産償却方法の届出書 | 最初の確定申告の提出期限まで |
都道府県税事務所にも個人事業開始申告書を開業後速やかに提出する必要があります。
会社を設立すると決めた場合の流れ
会社を設立すると決めた場合の流れを箇条書きします。大体このような流れで進めることになります。
※ここでは株式会社を設立することを前提に記載しています。
- 最初に発起人を決めます
- 自分の会社で使用したい商号の事前調査を行う。すでに登記されている商号をつけることも可能ですが、トラブルになることもある為、事前に本店予定地近隣の同一商号を調べておきましょう。
- 会社の基本的なことを決める。例えば会社の目的、本店所在地の場所、事業年度、資本金等々。
- 会社の代表者印作成。設立登記の際に代表社員の届出が必要となります。
- 個人の印鑑証明書を取る。登記申請日から逆算して3ヶ月以内に発行されたものである必要があります。
- 定款を作成する。
- 次に作成した定款の認証を受ける。
- 3で決めた資本金を払い込む。
- 登記に必要な書類を作成し、法務局へ申請する。
- 晴れて登記完了。
- その後、税務署や都道府県、市へ届出をする。
会社を設立する場合、どうしても個人事業で始めるより手間が増えます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は起業を始めるなら個人事業の方が良いのか?会社を設立した方が良いのか?と迷われている人に判断基準を記載しました。起業したいという思いがある人は、目標に向かってしっかり計画を立てて一歩一歩着実に歩みを進めましょう。
起業するにあたり大体どれぐらいの資金があれば良いのか、という目安が知りたい方はこちらの記事も併せてご覧下さい。