ビジネスにおいて目標を達成するまでに注意しなければならないことがあります。
例えばこのようなことを思われていないですか?
- どんなことがあっても、とにかく相手に勝ちたい!
- 自分には相手よりも優秀な能力があり、どう考えても負けようがない
- 将来のことはよくわからないが、とにかく目の前の問題をがむしゃらにこなしている
つまり、勝負事には勝つことのみしか興味がなく、その後のことはその時考えれば良い。自分は優秀だから、少々無理をしても挽回できるであろう。
これらの考えは非常に危険です。
短期決戦で勝負を決める
それ兵を鈍らし鋭を挫き、力を屈し貨をつくさば、則ち諸侯、その弊に乗じて起こらん。智者ありといえども、その後を善くすること能わず
孫子では短期決戦を良しとしています。
長期決戦になれば自軍の戦力は疲弊し、やる気も衰えます。其の状態が長引けば長引くほど、戦力はどんどん失われていき、財政も危機となります。そして、そうこうしているうちに他の諸国に攻め込まれます。そうなってしまっては、どれだけ優秀な人材がいたとしても時すでに遅しとなり、もはや収拾することはできないとなります。
自分が目指す目標がどこにあるのかを見極め、今ある状況を見つめ直そう
自分が目指す目標がどこにあるのかを見極め、そして今自分が置かれている状態を客観的に見つめ直すことは、非常に大切なことです。
先程見ていただいた孫子の兵法の一文から読み解くと、自分の目標をはっきりと見据えたら長期の計画で考えるのではなく短期の計画で考えるべきということが読み取れます。
なぜそのように言えるのか?
まず、目標達成までに乗り越えないといけない対象があったとします。例えば、それがライバルであった場合、何としても勝ちたいという気持ちが湧き上がってきます。そして、そこに自らの全力を出し尽くし、辛くも勝利を収めたとして、気づけば自分も相当なダメージを受けてしまうことがあります。
それは時間であったり、お金であったりします。
また、ビジネスにおいてライバルとの値引合戦となった場合、相手よりもたくさんの商品やサービスを売るために、自らの身を切る値引きという戦略にでざるを得ないことも考えられます。
この場合、多くの犠牲を払いライバルに辛くも勝利を収めたとしても、自分自身も相当なダメージを受けてしまっています。余裕がある場合は別として、ただ、目の前のライバルを倒すことのみに集中して、自分の限界近くまで、あるいは限界を超えるところまで踏み込んだ犠牲をだしてしまっては本末転倒になります。
そして・・・
両者の戦いを物陰からじっと息を潜めながら機会を伺っていた第三者に、漁夫の利を奪われかねないということです。突然現れた第三者に驚いて、抵抗を試みようとしても、ライバルとの戦いで傷ついた今の自分の力では盛り返す事が叶わない・・・。ただ物陰から隠れて覗いていた第三者に、美味しいところを全て持っていかれる・・・。こんなことにだけはならないように気を付けなければなりません。
それでは、どうすれば良いのか?
※「漁夫の利」とはお互いに争っている間に、第三者が労せず利益を横取りするという意味です。
孫子の兵法ではどうすることを示しているのか?
先程の孫子の兵法から自らは無意味な争いには身を投じないと決心したとしても、戦わざるを得ないこともあります。はっきり自分の目標を定めこの場面では自らの力を使いたくないと考えても、相手が戦いを挑んできた場合、戦わざるを得ません。
その場合、孫子では次のように示しています。
兵は拙速を聞くも、いまだ攻の久しきを睹ざるなり
これは、短期決戦で良い結果を聞くことはあっても、長期決戦となり結果が良かったという話は聞かないということです。
これを踏まえて、どうしても戦わざるを得ない状態になってしまった場合、第三者に漁夫の利をさらわれないように、とにかく短期決戦でことを終わらせることを考えること。また、短期決戦で終わらせられないと判断したなら、戦わないように対処すること。
ここでいう短期決戦とは・・・?
ライバルと戦ったあと、漁夫の利を狙って現れた第三者と十分戦えるだけの余力が残せる決戦にしなさいということです。
つまり,短期決戦とは一概に言えるものではなく、一人一人の体力であったり会社であれば資金力等によって,左右されるものです。
相手の油断を誘う
能なるもこれに不能を示し、要なるもこれに不要を示す。
これは、能力があるのにないようにみせかけ、必要なのに不必要なようにみせるということです。
相手が油断をしてこちらを甘くみるその時まで、じっと待ちましょう。不意打ちにより攻撃を受けた相手は、本来の力を出せずに壊滅状態になることも考えられます。
現在困難に直面している方は、上記の孫子の兵法から打開策を見出し、少しでも短期間で終結させられるように対応されてはいかがでしょうか。
【 参考書籍 】
日本経済新聞出版社 守屋淳 「図解 最高の戦略教科書 孫子」
日本経済新聞出版社 守屋淳×田中靖浩 「クイズで学ぶ孫子」